小説『最後のジェダイ』プロローグのあらすじ、ルークの妻


小説版『スター・ウォーズ / 最後のジェダイ』のプロローグはユニークな内容で、ルークの夢という形式でアナザーストーリーが展開されます。Amazonのなか見検索ではそのプロローグ部分が公開されており、小説『最後のジェダイ』の一番面白い箇所ともいえるパートを読むことができます。

本作のプロローグでは、ルークはタトゥイーンを離れることなく故郷にずっと残り続けるという人生を送り、妻も存在しています。ルークの妻となる女性、キャミー(Camie Marstrap)は『EP4 新たなる希望』の削除シーンにも登場していて、ルークとは友人関係にある人物です。

©Disney / Lucasfilm

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ちなみにレジェンズ設定によると、ルークがタトゥイーンを離れた直後、キャミーはボーイフレンドのフィクサーと結婚することになるのですが、今回の小説のプロローグではルークはタトゥイーンに残り続け、キャミーと結婚するという人生を送ります。

もしルークがタトゥイーンを離れることがなければ…。もしレイアと出会うこともなく、全ての冒険がなかったとしたら…。小説のプロローグではそのアナザーストーリーが展開します。

プロローグ

ルーク・スカイウォーカーはタトゥイーンの冷たい砂漠の中に立っていた。その隣には彼の妻がいる。

水平線にかかる空にはまだ夕焼けが広がっていたが、星たちもすでに姿を見せ始めている。ルークはそれをじっと眺め、消え去ってしまった何かを探していた。

「何か見つけたの?」キャミーが尋ねる。

彼女の声に愛情があった。しかし注意深く耳を凝らせば、その声にはどこか疲れも感じられた。

「スターデストロイヤーだ。」彼は答えた。「見た気がしたんだ。」

「それなら、あなたを信じるわ。」彼女の片方の手はルークの肩にある。「あなたはいつだってすぐに気付くから。たとえ真っ昼間だってね。」

ルークは微笑む。彼は遠い昔、トシ・ステーションでの出来事を思い出していた。空に2隻の船が浮かんでいて、それを話そうと友達のもとに飛んで行った日のことだ。キャミーはその話が信じられず、彼女の古い双眼鏡を食い入るように眺めたが、やがて諦めたのかそれを彼に投げ渡し、双子の太陽の厳しい日差しから目を休ませた。フィクサーも彼の言う事を信じなかった。ビッグズもそうだ。

だが、彼は正しかった。

ビッグズ・ダークライターのことが頭に浮かび、彼の笑顔は消えた。タトゥイーンを飛び出し、想像もつかないほどどこか遠くで死んでしまったあいつ。ビッグズ…。最初の友達だった。そして唯一の友達でもあった。彼はそう思った。

しかし、そんな思いも彼の頭からすぐに消える。まるで昼間に蒸発装置のケースを素手で手際よく扱うときのように。

「帝国軍はいったいこんなところで何を探しているんだろう。」彼はそう言い、また空を探し始めた。モズアイズリーで兵隊の補給をするにしても、スターデストロイヤー級の戦艦なんて必要ないはずだ。近頃の銀河の平和を考えると、戦艦なんて必要ない。

「まあ何にしても、私たちには関係ないことよ。」キャミーは言う。「そうでしょ?」

「もちろんそうだ。」ルークは答える。だが、その目は敷地の境界に連なる明かりをくまなく見ていた。最近はもうそんな心配は特に必要なかったかもしれない。タスケン・レイダーだってここ20年姿を見せていない。しかし、古い習慣はそう簡単には消え去りはしない。

タスケンはいなくなり、砂漠に残ったのも骨だけだ。理由は分からない。だがなぜかルークはそれを寂しく感じていた。

「帝国へのノルマはここ5年間しっかり守ってる。」キャミーは言う。「ジャバに水の税だってちゃんと支払ってる。私たちは誰にも借りは作ってない。私たち何にもしてないわよ。」

「そう、何にもしていない。」ルークも同意するが、だからといって安全だという保障は全くなかった。何にもしていない人々にこれまで沢山のことが起こってきた…。誰も二度とは話したくないようなことばかりだ。少なくともまともな神経をした者にはそうだった。

彼の頭の中で、遠い昔に起きた日の記憶がよみがえる。そんなこともう考えるなと、自分自身に何度も言い聞かせてきたことだ。あのドロイド。そしてあのメッセージ…。高貴な若い女性がオビ=ワン・ケノービに助けを求めていたホログラムの一部。

過去はもう忘れなさい。キャミーがいつも彼に言っていたことだ。しかし今こうして暗闇を見つめていると、あの日のことがルークの中で再び蘇ってくる。キャミーのアドバイスに従うなんて彼には無理だった。

あの日、ルークは叔母と叔父と夕食を取っていたとき、あのアストロメク・ドロイドは闇の中に姿を消した。オーウェン叔父さんが怒るのを恐れたルークは、タスケンの危険をかえりみず農場を抜け出した。

だがあの夜、サンドピープルが姿を現すことはなかった。ルークは逃げ出したアストロメをク見つけ、それを農場に持って帰る。オーウェンとベルを起こさないよう、最後の20メートルはランドスピーダーを押していった。

ルークは悲しそうに笑いながら、もし全てがもっと別の通りに運んでいたらと考えていた。いつも彼がしていることだ。ずっと以前にもうすでに亡くなっていて、タトゥイーンの夜にやられた向こう見ずな農家のひとりになっていてもおかしくなかった。

しかし、彼はこれまで幸運だった。そしてきっとこれからもそうだ。

あの日、ストームトルーパーたちがやって来たのは、ルークが南にある頑固なコンデンサーでの作業を終え帰ってきたときのことだった。あのコンデンサーはオーウェンとベルの悩みの種だったもので、現在は彼とキャリーが同じ思いをしている。軍曹はデューバックから降りもせず、要求を伝えてきた。

「スカベンジャーがお前にドロイド2体を売り渡したはずだ。それを持ってこい。今すぐにだ。」

ルークはガレージからドロイドたちを引っ張り出すはめになった。アストロメクはうるさくわめきたて、プロトコルドロイドの方は降参していることをしきりに伝えていた。彼らは容赦ない暑さの中一時間以上も立ち続け、その間も帝国軍はドロイドのメモリーバンクを調べていた。オーウェンがせめてベルだけでも日陰で休ませてほしいと頼んだが、ストームトルーパーたちはそれを許さなかった。

老ベン・ケノービが姿を現したのはそのときだった。あの埃まみれのブラウンのローブに身をまとい、砂漠の中からどこからともなく現れた。彼は微笑みながらストームトルーパーたちに話しかける。まるで古い友人がアンカーヘッドでばったりと出くわしたかのようだった。彼は片方の手を少し振り、こう言った。ルークに関する情報は間違いだ。その子の苗字はスカイウォーカーではない。ラーズだ。

「その通りだ。」オーウェンはそう言う。彼の目はベルの方に向けられる。「ルーク・ラーズだ。」

ベンは続いて、オーウェンを尋問する必要はないとストームトルーパーたちに伝えた。しかしその頼みは拒否される。こうしてルークの叔父はドロイドたちと一緒に部隊の輸送船まで連れていかれることとなった。ドアが閉められる前、アストロメクは最後に必死の金切り声を上げていた。

オーウェンが解放されたのはそれから3日後のことだ。彼は真っ青で、モス・アイズリーから長い帰路につく間もずっと黙りこくったままだった。それから数週間が経ち、ルークは意を決し、帝国軍はこれに対する補償をする気があるのだろうかと聞いてみた。オーウェンはそんなこと忘れろと彼を怒鳴りつけ、その手を肘の下にしまい込んだ。しかし、ルークはふたりが震えていたことに気付いていた。

頭上ではひとつの隕石が燃えて消えていった。ルークの夢物語に揺さぶりをかける。

「今何を考えているの?」キャミーが尋ねる。彼女の声は用心深かった。

「私ももう年だなあってね。」髭を引っ張りながらそう答える。「年をとって白髪も増えた。」

「あなただけじゃないわよ。」彼女はそう言い、その手は髪の方へと行く。彼はキャミーに笑いかけたが、彼女は夜の先をただ見つめていた。

その後、ベンを再び見た者は誰もいない。しかしこんな噂があった。ガンシップ1機がジャンドランド荒野を低空で飛んで行って、その夜、炎が上がったと…。アンカーヘッドではそんなの酒場の噂だろうと誰も聞く耳を持たなかったが、しかしルークは思った。部隊が農場にやって来たのは事実だ。ダークライターの農場にも奴らがやって来て、ビッグズの家族は連れていかれてしまった。ダークライター一家はそのまま帰ってくることはなかった。彼らの農場はジャワやサンドピープルに荒らされ、今では砂に埋もれている。

そして数週間が数ヶ月に、数ヶ月が数年に、数年が数十年となった。機械を扱うコツ、タトゥイーンという気が狂いそうなほど大変な環境で生き抜くことへの心得、良い結果をもたらすことができる天賦の才。ルークにそれらが備わっていた。子供の頃バカにされた彼も、今ではラッキールークとよく呼ばれるまでになった。

キャミーにはそれが分かっていた。そしてフィクサーが動かすのは口ばかりで、実際には何もしないことにも気付いていた。彼女はルークと結婚し、ふたりはオーウェンとベルともパートナーになった。そしてやがて彼らは農場を受け継ぐことになる。ふたりの間に子供が授かることはなかった。心のどこかに残る静かな痛みで、彼らがこの感情を正面から認めることはもうないだろう。だが、ふたりは実によく働いた。タトゥイーンで望めるだけの快適な暮らしを築き上げた。

しかし、ルークはオビ=ワンに助けを求めていたあの少女のことを夢見てやまない。つい先週もルークは突然目覚めることがあった。アストロメクがガレージで今でも彼を待っていて、そして彼のためにいよいよ全てのメッセージを流すことになる…。そんな思いと共に目覚めるのだ。ルークが聞かなければならないとても重要なもの…。彼がやらなければならないなにか。彼が成し遂げる運命だったなにか。

ドロイドがストームトルーパーたちに持っていかれた後、あのミステリアスな少女の正体はきっともう分からないだろうとルークは思った。しかしそれは違った。それから数週間、HoloNetではそのことが盛んに流されることになる。そして最後の放送では、プリンセス、レイア・オーガナは自身の過去の悪逆非道と銀河の結束を呼び掛けたことを謝罪したと伝えられ、彼女は処刑された。

ルークは気になっていた。帝国は発言の映像記録を公開することはなかったため、ルークには断片的に見たプリンセスの記憶だけが残った。いったいどんな重要なミッションがあって、タトゥイーンでひとり暮らす隠者のもとにまで彼女を駆り立てたのだろうか。

それが何にせよ、失敗に終わってしまった。オルデラーンは今では瓦礫と化し、モン・カラ、シャンドリラも同様だ。バトルステーションに全て破壊され、分離主義者と抵抗軍の広がりは完全に断ち切られた。こうして銀河に平和がもたらされた。

少なくとも争いの種はなくなった。いずれにせよ同じことだ。それで十分だ。

彼はキャミーが自分の名前を呼んでいるのに気付いた。もう何度も呼んでいたようだ。

「あなたがそんな顔してるのを見るのは好きじゃないわ。」彼女は言った。

「そんな顔?」

「分かるでしょ、私が言ってること。何か悪いことが起きたと思っているときの顔よ。例えば、浮気されたときみたいに、あるいはこれまでの全てが全部間違いだったみたいな、そんな感じよ。タンクとビッグズの後を追ってアカデミーに入るべきだった、とか。本当はここからずっと離れた所にいるはずだった、とか。」

「キャミー…。」

「私から離れたずっと遠くに。」彼女は消え去るような小さな声でそう言った。

「私がそんなこと思っていないことくらい、お前も分かってるだろ。」彼の手が妻の肩の上に置かれる。肩に力が入るのを感じていたが、彼はそれを無視した。「私たちは良い人生を送ってきた。これがまさに運命だったんだよ。さあ、一緒に中に入ろう。もう冷えてきた。」

キャミーは何も答えなかった。しかしルークに導かれるまま、農場入口にあるドームへと進む。入口の所でルークは立ち止まり、夜空を見上げ最後の視線を向ける。あれが本当にスターデストロイヤーだったかは分からない。だが、それが再び姿を現すことはなかった。

何もない空。しばしの時間が流れ、やがて彼もその場を後にした。

ルークはハッと目が覚める。本能的にすぐに座位の姿勢に戻った。彼の機械の手が音を立て、オクトーの草の中で暮らす虫の音と共鳴する。

彼は着替えながら、今見た夢を振り払おうとする。ウールの衣装と防水性のジャケットに袖を通す。小屋のメタル製のドアを開いた後、今度は背中の後ろで静かにそれを閉める。もうほとんど夜明けだった。薄暗い景色、水平線の上に真珠のように光る微かなきらめき、その下に広がる漆黒の海。

オクトーの海は今でも彼を驚かせる。空虚で穏やかなものから、踊り狂う混沌にも姿を変えることができる、無限の水。これらの水全てがいまだに信じられないものに思えて仕方がない。ある意味、自分もまだタトゥイーンの砂漠の子供にすぎないな。彼はそう思った。

階段のずっと下の方では、ケアテイカーがもうすぐ新しい一日を始めることになるだろう。気が遠くなるほど長い間、ずっと彼らがそうしてきたように。ケアテイカーにはやるべきことがあり、また彼もそうだった。向こうは太古の昔にした協定で、こっちは自分自身の選択によるものだ。

若い頃、タトゥイーンでの日常仕事にはうんざりしていた。しかし今ではどうだ。あのときの経験がオクトーでの日々の基礎を与えてくれた。ミルクを絞り、魚を捕まえ、緩んだ石の階段を直す。

だが、まだ終わりではなかった。

ルークは階段をゆっくりと上がり、海を見下ろす草原までやって来た。彼の身体は震えている。夏もほとんど終わろうとしている頃だった。そして先ほど見た夢のせいもある。

あれはただの夢ではなかった。それはよく分かっていた。

ルークは機械の手でジャケットのフードを上げる。もう片方、血が通うほうの手はあごひげをさする。彼は自分自身に問いかけようとするが、しかしそのことを何よりも知っているのは自分だった。この地ではフォースが作用する。夢の中にまで忍び込み、彼が張った防衛線をすり抜けてくるのだ。

だが、あの夢は良い知らせなのだろうか?それとも警告なのだろうか?あるいはその両方なのだろうか?

物事が変わろうとしていた。なにかが訪れようとしている。


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