ローグ・ワン序章、ジン・アーソの過去を描く小説『Rebel Rising』の一部抜粋


スターウォーズの初のスピンオフ映画となった『ローグ・ワン / スターウォーズ・ストーリー』(原題:Rogue One: A Star Wars Story)では、主人公ジン・アーソとその仲間たちはデススターの設計図を盗み出すことに成功します。

そして『エピソード4 / 新たなる希望』では、その設計図が契機となり反乱軍はデススターの破壊に成功し、ルークたちは一躍ヒーローとなります。

『ローグ・ワン』はそんな語られることのなかった影のヒーローにスポットを当てた作品なのですが、かつてのジン・アーソも帝国軍によってその人生が破壊された被害者の1人でした。

母親の死、ソウとの出会い

映画『ローグ・ワン』の冒頭でジンは母親を失い、彼女は失意の中独りで助けが来るのを待ち続けます。そこにジンの両親から連絡を受けてやって来た、反乱軍の過激派組織のリーダー ”ソウ・ゲレラ” によって、少女ジン・アーソは救出されます。彼女はまだこのとき8歳でした。

©Disney / Lucasfilm

そして映画ではこのシーンの直後に時間が一気にスキップし、次のシーンではジンは大人の姿で目を覚まします。

ジンの過去を描く小説『Rebel Rising』は、彼女とソウが出会った直後の日も描かれていて、映画では語られることのなかった二人の関係を知ることができる貴重な作品といえます。

両親を失った少女ジンですが、彼女にはソウという新たな支えとなる存在がいたのです。ソウは彼女に住む家だけではなく、生きる術も授けます。

こうしてジンは組織の戦士として成長し、ソウの右腕となり危険と隣り合わせの人生を送るのですが…やがて彼女はソウの駒でしかない自分の存在に次第に疑問を抱き始めます。

小説『Rebel Rising』より

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翌朝ジンが目を覚ましたとき、全ては暗闇に包まれていた。部屋に窓なんてない。部屋の匂いもかび臭くてどこか変だ。家でもなんでもない場所で目を覚ますという非日常的な空間で、なんとか頭を整理しようとする。しかし現実が彼女の心に重くのしかかった。

ジンが目をこすると、腫れぼったく乾いていて、自分がずっと泣き通しだったことを思い出させた。そしてなぜ泣いていたのかその理由もだ。胸が煮えたぎるような感じがして、熱いものが喉の近くへと上がってくる。

前の日に起きたあの出来事を追い払うことなんて出来ない。ママの身体が力なく地面へと崩れ落ちたときのあの音。そして穴の中で誰かが助けに来てくれるのを、ただ待って、待って、待ち続けた。

いや違う。助けてほしかったのは”誰か”なんかじゃない。パパに助けてほしかったんだ。待っていたのはパパなんだ。パパが助けに来てくれるはずだった。ソウなんかじゃない。

驚くほど激しい怒りが身体の中で燃え上がってくる。こんなに怒りを感じたのは、これが初めてだ。助けてくれなかったことでパパを責めるのなんてフェアじゃない。そんなこと心の底では分かっている。

ただやり場のない感情はどうすることもできなかった。しかし悲しみに飲み込まれてしまうことを考えれば、怒りのほうがマシだったかもしれない。

部屋のドアを開けて通路に顔を出すが、ソウの姿はどこにもなかった。空腹のせいでお腹が少し痛む。他の部屋をノックしてソウを探そうかと考えたが止めた。彼女は共有ルームに行き、棚から栄養ミルクの缶を取り出した。ソウがそれを開けているのを少し前に見ていたのだ。そしてテーブルでそれを独りですすった。

部屋にはソウが置いていったモノが沢山あり、彼女はダラダラとそれを眺めていた。ソウは少しだらしがない奴かもしれない。前の日にジンが飲んだミルクの缶が、まだテーブルの上にある。

この長いテーブルの反対側はソウの作業スペースだった。ジンの父親が作業をしていたのを思い出させる。”管理された下での散らかり”、パパはそう呼んでいた。

透明のシートの上には、星のチャートと帝国艦隊の製図が一緒くたにされていた。しかしソウはそれらを脇へと押しやったようだった。そしてぽっかり空いたスペースにはデータパッドが1つ置かれている。

ソウがクリスタルに関して書き残したメモがあり、彼女はそれを見る。そこにはある特定の惑星が書き記されていて、その幾つかは父が研究していたものと同じであることが彼女には分かった。ジンはテーブルの上に置かれたホロキューブに触れてみる。すると父親の姿が現れ、彼女の顔の前で浮かんだ。

ジンは気まずそうに辺りを見回す。あれこれ覗きまわっている奴だなんて、ソウに思われたくない。しかしソウの姿はそこにはなかった。閉ざされたドアがいくつかあって、彼はそのどれかにいるだろうと彼女は思った。あるいは外にいる可能性もある。

缶の底に残ったミルクをすする。

彼が私を置いてくはずない。

ジンは缶をテーブルに置く。

私は独りじゃない。独りなんかじゃない。

やけに静かだった。

「ソウ、いるの?」ジンはかすかな声でそう言った。もし彼が眠っているなら起こしたくはなかったからだ。「ソウ?」彼女はもう一度尋ねる。今度はもう少し大きな声で。

どのドアも開くことはない。

椅子を後ろに動かす。石の地面の上で金属がこすれて、ギーと鳴った。ソウが私だけをここに置いて、1人で行ってしまうなんてあり得るのだろうか。

ジンの鼓動が早まり、通路のドア一つ一つを確かめていく。ソウを邪魔するかもしれないなんてもう気にしていられない。彼が怒ったとしても、それがどうしたことか。ソウがいないよりかはマシだ。

ほとんどのドアはロックされていて、そうじゃない部屋もくもの巣が張っていて、ガラクタばかりが積まれていた。ジンはますますパニックに陥り、外へと通じる最後のドアに差し掛かったときには、彼女は実際震えていた。

勢いよくドアを開ける。しかし彼女がソウの姿を見ることはない。いや違う、”聞いた”のだ。

ジンは大きな石の横を通り、通信タワーがある場所まで這って進む。ソウは複数のドロイドたちの相手をしていた。背が高い奴、痩せていてメタリックの身体のドロイドなど、様々なタイプがいる。彼はブラスターを撃ったかと思えば、今度は格闘戦といった具合に、両方を織り交ぜて戦っていた。

ソウの身体はとても大きく、年もとっていて、傷も沢山あった。しかし一度戦いが始まれば、彼は必ず生き残るだろう。ジンには想像もつかない、ありとあらゆる手を使ってもだ。

彼は一体のドロイドに飛びかかり激しく叩きつける。すると今度は素早く反転し、その先にいるドロイドに向けてブラスターを撃つ。命中したかを確認することもなく(実際命中した)、その場にかがみローリングをして近く岩に身を隠す。

そしてまた3発発射し、それが3体のドロイドに命中した。ドロイドの身体はカチャカチャと鳴り、空の薬きょうがまるでダンスのように転がる。

「ソウ?」ジンが声をかける。

ソウが立ち上がると、汗がしたたり顔の傷跡をつたった。彼はただそこに立って、ジンが話すのを待つ。

この瞬間にようやく理解できた。帝国軍兵士がやって来た日、母がソウと連絡を取った理由がやっと分かった。彼が友人だからじゃない。これのためだ。

「あんなふうに戦う方法、私にも教えてほしい」ジンは尋ねる。

「ダーリン」彼はにかったと笑った。「ハナからそのつもりだったさ」

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Source: starwars.com