「ジョージ・ルーカスはマラ・ジェイドを嫌っていた」 – メイキングシリーズの著者J.W.リンズラーが明かす


現在はレジェンズ設定とされたExpanded Universe(以下、EU)の中でも人気が高かったマラ・ジェイド。私は昔のレジェンズ小説を全く読んだことがないのですが、そんな自分でもマラ・ジェイドがどういうキャラクターなのかは知っていて、それだけEUの世界観では重要人物だったのかもしれません。

今回このレジェンズキャラクターに関するジョージ・ルーカスのエピソードが披露されています。

そもそもマラ・ジェイドとは、『ジェダイの帰還』から5年後を描いたティモシイ・ザーンのスローン小説(91年)にて初登場し、その後、ルーク・スカイウォーカーの妻になる人物です。

©Lucasfilm

ファンにも人気のあったマラ・ジェイドですが、どうやらジョージ・ルーカス本人は好ましく思っていなかったようです。メイキングシリーズの著者J.W.リンズラーがStarWarsNewsNet(SWNN)のポッドキャストに出演し、上記の話を披露しています。

J.W.リンズラーとは

話の本題に入る前に、J.W.リンズラー氏のことを少し紹介しておくと、この人物は『The Making of ~』シリーズの著者として知られていて、過去にはEP3とオリジナル三部作のメイキング本も執筆しています。

©Lucasfilm

以下はSW関連のJ.W.リンズラーの作品一覧。

  • Star Wars: Visionaries (introduction) – 2005年4月
  • The Art of Star Wars Episode III: Revenge of the Sith – 2005年4月
  • The Making of Star Wars Revenge of the Sith – 2005年4月
  • The Art of Revenge of the Sith – 2005年9月~11月
  • The Making of Star Wars: The Definitive Story Behind the Original Film – 2007年4月
  • The Sounds of Star Wars – 2010年9月
  • Star Wars Art: Visions (introduction) – 2010年10月
  • The Making of The Empire Strikes Back – 2010年10月
  • Star Wars: The Blueprints – 2011年9月 / 2013年4月
  • The Star Wars – 2013年9月~2014年5月
  • The Making of Return of the Jedi – 2013年10月
  • Star Wars: The Clone Wars – “The Disappeared, Part I & II”(脚本) – 2014年3月

このようにリンズラーはルーカスフィルムのエディターとして、これまで多数の本を執筆しており、特に30年以上眠っていた第一作目『新たなる希望』の大量のアーカイブを掘り起こし、メイキング本を完成させたことで、社内インディー・ジョーンズといった存在でもありました。

ちなみに、『フォースの覚醒』の撮影終盤に会社を退社し、現在はフリーランスとして活動しているとのことです。

以下、J.W.リンズラーのインタビュー。

ルーカスはマラ・ジェイドが嫌い

(動画34:50から)

ジョージはマラ・ジェイドが我慢ならなかった。まあね、とにかく嫌だったんだよ。連中はちょっと行き過ぎて、コスモポリタン・マガジンから飛び出したモデルのようなマラを作り出した。あれら全てがスター・ウォーズじゃないって彼は思ったんだよ。自分のスター・ウォーズのビジョンとは全然違うぞってね。

あれはたしかスー・ロストーニ(作家)だったと思うのだけど、次の小説でマラ・ジェイドは殺されると伝えてくれてね。私は思わず「ジョージにも教えてやろうか」と答えたよ(笑)

特に面白かったのはね、ジョージの反応というのは特に言葉を発することはなかったんだ。だけど、彼がとても嬉しがってたのは明らかだった。あれがもうとにかく面白かったよ。

(SWNN: それは面白い。彼女はファンにとても人気があって、どういうわけか今でも彼女のことをクドクド言っている人がいるくらいなのに。ジョージ本人はあのキャラクターが嫌いだったなんて。)

彼女はルークと結婚してしまったね。「ジェダイは結婚しないだろ」ってジョージは言ってたよ。彼にとってはそれが重要だったんだ。

ジョージ・ルーカスはマラ・ジェイドをとても嫌っていたとのことで、今回のポッドキャスト放送中にJ.W.リンズラーは何度もそのことに言及しています。

一方、ルーカスはEU自体を嫌っていたわけではなく、ライセンス貸与に関する現実的な事情もあり、それなりに良好な関係を築いていたことが説明されています。

EUに対するルーカスの態度

(動画36:35から)

(SWNN: そういえばEUというと、今の新しい映画に怒っている人たちがいる。だって新しいカノンが出てきたせいで、EUは消されることになったから。だけどあなたの話を聞いていると、ジョージは一応それを承認していたけど、決して正史とは思っていなかった?)

ジョージのEUとライセンス貸与に対する態度はとても健全だったよ。特にエピソード1以後には、ライセンシングはそれこそとてつもないほどのお金を生み出すようになって、誰も逆らえない絶対的なものになっていった。つまりね、ライセンシングだけには誰も触れたくないんだ。

それにジョージには優秀な補佐役がいて、普段は彼らがライセンシングを任されていた。そして、彼が特に気にするだろうと思われることだけは、直接意見を聞くんだ。基本的に彼は、自分の頭の中にあるものを全部みんなに吐き出して、「君らの好きなようにしろ。だけどヨーダの話はするなよ、とか、この映画では私がこれをするかもしれないから、君らはダメだぞ」という感じだ。

そっちはそっちのことを、自分は自分のことをする、といった具合だね。だけどEUがなにか矛盾したときは、我々が出版サイドに出向いて、どうやったら解決できるかリバースエンジニアリングの方法を話し合うんだよ。まあこれはね、半分見せかけみたいなものだけど(笑)でも、ほとんどの人はそれほど厳密ではないからね。

それにジョージもEUの方からアイデアを借りることがあったし、興味は確かにもっていたよ。それでもやはり基本的には「まず映画があって、あとはその他」だった。

(SWNN: 彼は絶対的な主導権をもちたがっていたけど、それでも自分の箱庭で他人が遊ぶのは認めていたわけだ。)

まさにその通り。彼はとても民主的だったよ。

(SWNN: だけどマラ・ジェイドだけは例外と。)

彼はマラ・ジェイドが好きじゃなかったからね。だけど、わざわざライセンシングに口出しして、「おい、彼女を殺さないとダメだぞ」なんてことは言わなかったよ。ただ、「私は気に入らない」と言うだけでね。

つまりだ、彼にはやらなければいけないもっと大きなものがあったんだよ。先進的なデジタルテクノロジーで映画製作を変えようとしていた。EUのような取るに足らない小さなことに関わっている場合ではなかったんだよ。他にもっとやるべきことがあったんだ。

感想

最近、久しぶりに『ザ・ピープルvsジョージ・ルーカス』(2010年)を見ることがあり、「そういえばルーカスが叩かれていた時期もあったなー」としみじみ思い出しました。スター・ウォーズの生みの親であるはずのジョージ・ルーカスが、「スター・ウォーズをまるで分かってない」とファンからバッシングを受けてしまう、そんな状況が一昔前まで存在していたわけです。

今回のニュースについても、もしこれがディズニー買収以前であれば、もしかすると一部ファンからは激しい反応があったのでしょうか。

現在はその批判の的が「ディズニー」「キャスリーン・ケネディ」「映画監督」にすり替わり、どうやらルーカスバッシングは自然とフェードアウトしてしまったようです。そしてよく目にする批判はというと、映画の内容に始まり「これならレジェンズ小説のほうがマシだった」と続く始末です。(自分は全く賛同できない)

ちなみに、マラ・ジェイドを作り出した張本人のティモシイ・ザーンは、ジョージ・ルーカスのプリクエルを公然と批判していた人物として知られ、あのミディ=クロリアンについても「ジョージはフォースが何なのか忘れてしまったようだ」と発言しています。(私はアンチプリクエル派なのでこちらは少し理解できる)

EU作家が自分のつくった世界で好き勝手し、挙句の果てに映画の内容にまで口を出してきたとなると、ルーカスにとってはかなり煙たい存在だったかもしれません。しかも、マラ・ジェイドは自分のスター・ウォーズの世界観に全く合致していないというおまけまで付いている。

一方、ティモシイ・ザーンも過去のインタビューの中で「ジョージの箱庭というより、彼の道路で遊ぶようなものだ。後ろから彼が突っ込んできて、おもちゃを全部ぶちまけられても誰も文句は言えない」と答えており、この辺にEU作家のつらさがにじみ出ているような気がします。

「ジョージ・ルーカスの正史があって、あとはそれ以外」「映画があって、あとはその他」

結局のところ、レジェンズ小説は映画より下のヒエラルキーで、”その他”の領域に属すにすぎなかったのでしょうか。

J.W.リンズラーは他にも非常に興味深い話を披露しており、それは次回の記事で取り上げます。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。