Han Solo movie

『ハン・ソロ』監督降板の舞台裏、ハン・ソロ役の俳優とも対立


スター・ウォーズの第二弾となるスピンオフ映画『ハン・ソロ』の監督が、撮影終了まで残り3週間というこのタイミングで降板するというニュースは伝えられ、ファンにとってはショックが大きかったと思います。

監督降板の理由については、公式には”クリエイティブな面での相違”を説明していますが、メディアの報道によると監督(Phil Lord、Christopher Miller)とルーカスフィルム(脚本家Lawrence Kasdan、ケネディCEO)との間でハン・ソロのキャラクターをめぐる意見の違いから対立が生まれていたことが伝えられています。

今回の発表の受け止め方としてはおそらく2つあるだろうと思われます。

1つはケネディCEOの擁護派で、長いキャリアをもつ彼女が脚本家のKasdanを支持したからには、監督側に重大な問題があったのだろうとする見方です。Kasdanは『エピソード5 / 帝国の逆襲』、『エピソード6 / ジェダイの帰還』でも脚本と務めた人物で、今回の『ハン・ソロ』を最後に引退することを表明しています。

もう1つは、L&M監督のコメディ路線に期待し、それを邪魔したルーカスフィルムの幹部を古い体制側の人間として非難するというものです。特にケネディCEOは監督に直接クビを言い渡した人物として、現在ネットでは批判の矢面に立たされています。

この降板劇についてはメディアの報道やプロダクションの内部情報を含めて様々なレポートが飛び込んでおり、どうやら監督vsケネディCEOという単純な構造ではないことが分かってきました。

非常に興味深い新情報が判明しており、今回の記事ではそれを取り上げたいと思います。

Kasdanの強い推薦

©Disney / Lucasfilm


まず最初に、Phil LordとChristopher Millerという若いコンビ監督がスター・ウォーズという大きなフランチャイズの監督任された背景には、今回の話題の中心でもある 脚本家Lawrence Kasdanが大きく関わってきます。

『帝国の逆襲』やインディージョーンズの脚本家でもあるKasdanがこのL&M監督に強い興味を示し、ケネディCEOを説得します。そしてプロジェクトが開始するという経緯がありました。

ルーカスフィルムのストーリーグループの1人、Kiri Hartは昨年のStar Wars Celebration Europeでこのように語っています。

Kasdanはふたりにとてつもなく大きな信頼をよせていて、彼らこそが適任だと感じていた。

それでは一体なぜL&M監督とKasdan/ケネディCEOとの間に亀裂が生じてしまったのでしょうか。

正確な時期ははっきりとはしていないものの、どこかの時点で彼らは脚本をめぐって対立したといいます。

L&M監督の映画は即興的なコメディが特徴なのですが、一方Kasdanは脚本に忠実であるべきで逸脱はできるだけ避けるべきだという考え方の持ち主です。

特にスター・ウォーズはフランチャイズ全体での世界観やストーリー設定の統一性の重要性もあるため、綿密なリサーチのもとにゴーサインの出た脚本をルーカスフィルムが重視するというのは理解できます。

どこで歯車がくるったのか

©Disney / Lucasfilm


L&M監督とKasdan/ケネディCEOの対立はたしかに報道されているのですが、しかしそれとは反対に撮影現場を評価する興味深い話も飛び出しています。

クビを言い渡されたからにはきっと酷い監督だったのだろうと思われるかもしれませんが、関係者の話として、L&M監督の撮影でのパフォーマンスは決して悪くなかったといいます。

伝えられているところによると、関係者の誰と話をしても今回のプロジェクトの素晴らしさを語るものばかりだったそうです。L&Mコンビは監督として素晴らしい仕事をしていて、実際2020年のスター・ウォーズ映画の後に、もう一度同じメンバーで今回の第2弾の映画をつくろうという話まであったといいます。

このようにL&Mコンビの評判は上々だったわけです。それでは撮影所で一体何の問題が生じ、どこで歯車が狂ったのでしょうか。

撮影が開始して数週間後、L&Mコンビは非常にうまくやっていたものの、1つの懸念が浮上します。そしてそれがもとでL&Mコンビとプロダクション幹部との間で言い争いが発生し始めます。

しかしここが非常に重要でもあり、面白い点でもあるのですが、このとき最初に異を唱えた人物は脚本家Lawrence KasdanでもケネディCEOでもなかったのです。

それはハン・ソロを演じる主演俳優、Alden Ehrenreichだったといいます。

若きハン・ソロが反対

©Disney / Lucasfilm


ファンにとってはハリソン・フォードこそがハン・ソロであり、どこか知らない俳優がそれを演じることに戸惑いを感じるかもしれません。しかしAlden Ehrenreichの撮影でのパフォーマンスについての評判は良く、キャラクターのエッセンスを尊重しつつもハン・ソロに新たな視点を加えるという面白いものであるといいます。

Alden Ehrenreichはハン・ソロを演じることを非常に真剣にとらえており、今回の対立劇でも最初に異を唱えた人物として重要な役割を担います。

彼はハン・ソロを演じる俳優として、撮影の最前線でそれを目撃していました。そしてL&M監督のいい加減なコメディ描写がハン・ソロというキャラクターに合わないのではないかと疑問を抱き始めます。

関係者の話によると、『Ace Ventura』(1994年)のジム・キャリーに似ているものだったといいます。

Alden Ehrenreichはその懸念をプロデューサーの1人に伝え、その人物がケネディCEOと話をします。そのことがきっかけで、ケネディはその時点で存在していた撮影フィルムを見直すという決断にいたります。

Alden Ehrenreichがハン・ソロ役を真剣に取り組む理由としては、スター・ウォーズ作品という重要性があるかもしれません。評価が良くない作品の場合は出演者も同様に批判の対象になり、しかもそれは長年に渡って続くことになります。

プリクエルでアナキン・スカイウォーカーを演じたヘイデン・クリステンの二の舞にはなりたくないと、Alden Ehrenreichが作品のクオリティに神経を尖らせたとしても不思議ではありません。

監督の評判は良かった

関係者の証言ではL&M監督の評判は良く、ふたりのパフォーマンスにはなんの問題もなかったようです。しかし実際には撮影現場で問題が生じているため、評判の良さとは一見矛盾しているようにも思えます。

この矛盾はおそらく以下のようなものが理由なのではないかと考えられます。

撮影プロジェクトに近い人物が撮影をポジティブに受けとめる背景として、彼らが目撃していたのはあくまで短い限定しているシーンでしかなかったということです。

しかし後になって個々の収録カットを合わせてみてそれを確認すると、一気にほころびが露呈してきたというは十分に考えられます。おそらくケネディCEOとKasdanが深刻にとらえ始めたのはこの辺りからだったのではないでしょうか。

L&M監督の撮影手法は、俳優同士の即興の掛け合いによって発展させていくという特徴があり、このことも今回の破たんに影響があったしれません。コンビ監督の手法はコメディ作品には有効かもしれませんが、ケネディCEOはKascanの脚本が最重要視されるべきだと立場をとるため、どうしても双方の間に溝が生まれます。

ここに大きなボタンの掛け違いがあったわけです。つまりケネディCEOはL&M監督を起用した理由として“スター・ウォーズにコメディ要素を加える”と考えていたのに対して、L&M監督は“スター・ウォーズを題材にコメディ映画をつくるため”自分たちが雇われたと解釈していた可能性があるということです。

ローグ・ワンの監督との違い

©Entertainment


そしてある段階で撮影が一時中断され、そのときにルーカスフィルムは撮影フィルムを見直し、L&M監督に映画の撮り直しを含めて再検討する必要があることを伝えます。

実はこれと同様のことが『ローグ・ワン』の撮影でも生じたという過去があります。しかし前回とは決定的に違う点として、ローグ・ワンのGareth Edwards監督がチームプレイヤーだったことに対し、L&M監督はプロダクションに非常に反抗的だと捉えかねない印象を与えたということです。

そしてL&Mコンビは最後通告を突きつけます。撮り直しは自分たちのやり方でおこなう、さもなくば自分たちは出ていく、というものでした。その結果、今週の月曜日にふたりはクビを言い渡されます。

個人的にはケネディCEOのやり方に賛成できます。彼女の関心事は、映画公開までは問題を解消するためにできることはなんでもすることにあり、プロジェクトを完遂するうえで必要であれば監督すらも追い出すというのは理に適っています。

世の中には有名映画のリブートや続編が失敗した例はたくさんあります。ターミネーター、X-menの新作、ゴーストバスターズetc…。

ウキウキ気分で映画館に行ったのに、スクリーンに登場したのが『Ace Ventura』仕立てのハン・ソロだったとしたら…。ショックで立ち上がれないかもしれませんね。家にあるスターウォーズのコレクションを全処分する人が出てきたとしても不思議ではありません。

ただ情報によると、キャストの演技は素晴らしく、L&M監督の撮影も評判は良いようなので、ルーカスフィルムの判断としては一部を撮り直す必要があるという程度なのかもしれません。そしてハン・ソロのパーソナリティ/性格をめぐってどうしても折り合いがつかなかったため今回の降板につながったのだと思われます。

来年公開される『ハン・ソロ』はL&M監督のエッセンスを残しつつ、アカデミー受賞経験をもつ新監督ロン・ハワードの雰囲気も楽しめるということで、個人的にはそれはそれで楽しみでもあります。

Source: SWNN