小説『The High Republic: Light of the Jedi』の感想

200年前、ジェダイ黄金期の物語。

まさに新しい時代の幕開けだ。登場人物に共感できるか心配だったのだけど、全員それぞれ魅力があり、終わってみればすっかりお気に入りの面々になった。今後の行方が早くも気になりだした。

ハイ・リパブリック小説『The High Republic: Light of the Jedi』。いやー、思いのほかかなり楽しめた。

せっかくだから忘れる前に色々書いておきたい。ここではなるべく細かい話は避け、本の大まかな印象を出来る限り伝えようと思う。

※記事には小説のネタバレが含まれます







事前の情報から『ハイ・リパブリック』シリーズのヴィランは“ナイル”と呼ばれる海賊集団であることは分かっていた。ただ、これには正直、少し懐疑的だった。だってほら…ジェダイってライトセーバーでブロック出来るじゃない?いざとなってもどうせ向こうに勝ち目はないし、敵としては弱いんでないかい!?と感じていた。

本音を言うと、ジェダイがライトセーバーで敵をぶった切るだけ!みたいなチープでありきたりな話にはもうウンザリしていたのも事実だ。もっと別の絵が見たいのはヤマヤマだが、そうは言っても、スターウォーズの世界でしかもジェダイを主軸に据えた物語でこれまでとは違ったものとなると…なかなか難しいのが現実だ。

「新しい時代」「新しいキャラクター」と聞いても、自分としてはそれが何なのかまでは分からなかった。どうせプリクエルの二番煎じだろう、オールド・リパブリックの二の舞になりはしないかと少し疑っていた。

©Lucasfilm Ltd.

そんな中で迎えた『ハイ・リパブリック』シリーズのフラグシップともいえる小説『Light of the Jedi』。結果的にこれはかなり嬉しい誤算となった。

ジェットコースターのように激しく展開する序盤、そして中盤以降も惜しげもなく謎が解き明かされ、随所に作者の工夫と豊富なイマジネーションが感じられる、まさに贅沢なストーリー構成だ。この小説はこれまでのスターウォーズ(特に映画)とは別のアプローチを取っていて、しかもストーリーテリングはかなり練られたものとあり、始めから終わりまで新鮮な気持ちで作品に飛び込むことができた。

ジェダイ

オリジナルトリロジーのときには、ヨーダの言葉「ジェダイはフォースを知識と守りに使う。攻撃ではない」が指すように、ジェダイは「聡明なモンク」というイメージだった。まだ未熟者の若きジェダイナイト、ルーク・スカイウォーカーたったひとりだけでもあれだけの卓越した輝きがあったのだ、昔のジェダイの騎士たちはさぞかし凄かったことだろう。老ベン・ケノービが「昔、クローン戦争があった。私も君のお父さんと一緒に戦ったのだよ」と語る言葉から、自分も子供ながらにまだ見ぬ神秘的な世界を想像していた。あれこそがスターウォーズのミソロジーの原点なのだ。

しかし、プリクエルではジェダイはうって変わって「単なる武闘派集団」と味もそっけもない感じで、思慮深さは全く感じられなかった。そこにとても失望してしまった。ミディ=クロリアンについては20年前に散々語りつくされたのでそれはまあいいとして、自分はライトセーバー自体にもどうしても違和感があった。パドメが寝ているそばで平気で振り回す無神経さも酷いが、なによりライトセーバーが危ないものだというイメージが消え去ってしまったのだ。斬られる敵は棒立ちのドロイドくらいなのだ、そう感じるのも無理はないだろう。奇抜なアクションに反比例するかのように、セーバーの切れ味も失われていった。当時言われていた「蛍光灯を持って走り回る恥ずかしい映画」とはまさに言い得て妙だろう。

一方『Light of the Jedi』でジェダイが直面する危機はプラネットキラー級の“大災害”(The Great Disaster)だ。一歩間違えたら…いや違うな、このまま行けば間違いなく星系全てが消滅!どうやってもまぬがれるのは無理だ!…と、待ち構えているのはこのような絶望的な状況だ。しかし、ここからオーダーが誇るエースジェダイ「エヴァー・クリス」が形成逆転、場外満塁ホームランを放ち、劇的な勝利を迎える。小説序盤における最大の見せ場だ。

承知のとおり、こういったときにはライトセーバーなど無意味だ。『最後のジェダイ』にてルークが「光る剣でファースト・オーダーの軍隊と戦えというのか?」と呆れ顔で言ったセリフが頭に浮かぶ。いくらジェダイといえども、そこまで強くはないのだ。これはプリクエル、ゲーム作品、クローン・ウォーズなどを経て、単なる漫画的なアクションヒーローと化したジェダイ像への牽制でもある。

ではジェダイが誇る最大の武器とは何か。それはライトサイドの精神だろう。これがジェダイが希望の象徴たるゆえんだ。命が危険に晒されている絶体絶命のときですら、平常心を失わず、最後までそこに立ち続ける「勇気」も求められる。黄金期のジェダイは全員が、見知らぬ誰かを助けるためにですらも命を投げ出す覚悟がある高潔な騎士たちだ。そして、その集団を結びつけるのが、類まれな能力を有するエヴァー・クリスだ。

小説の序盤にいきなり巻き起こる「大災害」の事態。ここでストーリーはフォースをキーテーマに据え展開していく。「フォース」が物語の焦点だ。目には決して見えない不思議なフォースパワー。そう考えると映像メディアではなく小説だったのは正解だったかもしれない。ロケーションの選択、エヴァの超能力、それと並行して語れる他のジェダイたちのフォース観。それら全てのフォースパワーがひとつの点として収束し、やがて不可能すら可能になる瞬間が訪れる。

ライトセーバー

今作はなかなかバトルシーンが豊富なのだが、一方でライトセーバーで敵を斬ることは少なかった。おそらく2か所くらいだろうか。ジェダイを主に据えた物語であるにもかかわらずである。やはり著者の根底にあるのは、「ジェダイはフォースを知識と守りに使う。攻撃ではない」の基本理念なのだろう。これは作中のキャラクターが口にするセリフからもうかがえる。

「刀は武士の魂」との言葉があるが、これはスターウォーズの世界でも同じだ。ライトセーバーは常にジェダイの手にある。しかし、あくまでその身を守るため、あるいは物事を正すため、ここ一番の重要な局面でそれを抜くのだ。

それに象徴するかのように、ライトセーバーの用途もユニークだ。

印象的なシーンはなんといってもエヴァのあの場面だろう。絶体絶命の状況下、エヴァは退路を完全に断ち切り、惑星ヘタザルの大地で最後の大勝負に挑む。エヴァは能力を発動するとき、しばしば地面から浮き上がるというなんとも神々しいジェダイなのだが、ここでの大一番ではさらにフォースでライトセーバーを浮遊させ、それを高速回転することで音の共鳴を図る。まるで催眠状態に入るための振り子のようにも思えるのだが、それがエヴァなりのトランス状態の入り方なのかもしれない。

© Lucasfilm Ltd.

エヴァはとにかくカッコイイ。本作に登場するキャラは全員魅力的なのだが、そのなかでもエヴァはやはり別格の存在感だ。エヴァのことはまた別の記事で色々話そうと思う。

それにしてもだ…。この小説では思いのほかジェダイは簡単に命を落とす。これはかなり予想外だった。唐突にジェダイが犠牲になるせいだろうか、作品にこれまでのスターウォーズになかった緊張感を与えている。

『ハイ・リパブリック』シリーズを始めるにあたり、製作チームの頭にあったのは「ジェダイが恐れるものは何なのか?」との問いだ。小説を読み終えた今、おぼろげながらその意味が分かってきた。今後はこれがキーテーマになっていくのだろう。

エヴァが恐れるものは何なのか。あるいはエヴァが誰かの恐れの原因になるのか。はたまた…うーん、もしエヴァが道を踏み外したらみんなの信仰心も揺らぐだろうなー、などと適当なことが自分の頭に浮かんだのだが、さすがにこんな超展開はないだろうな(笑)

ナイル

恐怖の話が出たので、最後にヴィランのことにも触れたい。

『ハイ・リパブリック』シリーズのヴィランとなるのは、アウターリムを拠点とする海賊集団「ナイル」だ。一見どこにでもいる海賊に思えるかもしれない。当初は自分もそう思っていた。たしかにそれは間違いではないのだが、不思議なことに、本が進むにつれその印象が目まぐるしく変わっていき、最後には全く別のものになっていたのも事実だ。これはやはりストーリーテリングの妙だろう。

普通であれば、まず最初に敵が提示され、主人公がそれと戦う…という流れになるだろうが、この小説は違う。いきなり天変地異が始まり、それに対処せざるを得なくなる、いわば「パニックサスペンス」だ。何十億もの命が一瞬で奪われかねない“大災害”の危機。果たして共和国とジェダイはこれをどう食い止めるのか…と、これが小説序盤のストーリーだ。

顔の見えない敵というか、そもそもヴィランが出てくることすらないのだ。これは新シリーズの入り口としてはかなり異例だろう。例えば、シークエルならまず最初にジャクーの村でファーストオーダーによる虐殺をみせて、ヴィランのカラーを出した。プリクエルも冒頭にドロイドを出してきた。

だが、小説『Light of the Jedi』ではヴィランの登場は第二幕まで待つことになる。映画トリロジーであれば、二作目にようやく出てくるようなものだ。読者としても、こんな大それたことをしでかしたのはいったい誰なのか!?と第一幕の流れが頭にあるため、ナイルがいよいよ表に出てきたときには思わず固唾を飲んでしまった。

© Lucasfilm Ltd.

話のみせ方もユニークだ。まずはターゲットとなる市民視点で語られるため、ナイルの恐ろしさが強調される。これは殺される側の目線だ、結構怖い。そして、やがてナイル本拠地の様子に迫り、各チームのボス、ついには核となるヴィラン「マーキオン・ロー」も登場するのだ。

酒、ドラッグ、殺しetc、なんでもありの集団とあり、なかなかダークな切り口と描写が並ぶ。スターウォーズの世界にはこれまでも海賊はいたが、ナイルは過去のそれらと比べても一線を越えているだろう。とはいうものの、単なる残虐非道な連中というわけでもないのだ。前述した通り「最初と後では印象がガラッと変わる」、実に不思議な敵でもある。どこか間抜けでトホホな感じは、やはり毎度おなじみのスターウォーズだ。

ところでこのナイルとマーキオン・ロー、実は秘密と陰謀が入り混じる、なかなか一筋縄ではいかない間柄なのである。物語が進みにつれ真相が徐々に明かされていく展開とあり、テイストとしては海外ドラマにも似ているかもしれない。とはいえ、『LOST』のように本当にゆーーくりと謎が解き明かされていくわけではない。本一冊の中でかなりハイスピードで物事が進展していき、その過程で気になることも出し惜しみすることなくポンポンと答えが出てくるのだ。

ああ、それにしても、マーキオン・ロー…。俺の大好きなヴィランがまたひとり生まれてしまった。なんてこった。

© Lucasfilm Ltd.

マーキオン・ローは例えれば、スローンとジョーカーをミックスした感じだろうか。スローン提督のクレバーさに加え、ジョーカーのように奇想天外な策を次々と打ち出すトリックスターの要素をある。マーキオン・ローはいくつもの仮面をあわせ持ち、一皮剥けばまた別の顔が現れる、といった具合の実に謎多き男だ。

それにしても、これだけの狂人があれほどの力を手にしたのだ、はたして黄金期のジェダイ戦士はどのように立ち向かうのか。そして、ロー一族の過去とジェダイの間にはいったいなにがあったのか。両者の因縁の行方はいかに…。今後の『ハイ・リパブリック』はまさにマーキオン・ローを軸に進んでいくことになるだろう。

最後に

どうやら情報によると、本作で登場したナイルとヤングアダルトノベル『Into the Dark』でフィーチャーされるモンスター「ドレンギア」が、それぞれハイリパブリックにおける二大脅威になるらしい。

『Into the Dark』のほうはどうしようかなーと思ってるんだよね。最近疲れてるから最後まで読み切れる自信がない。まあハマれば一気にいけるとは思うのだけど。

それにしてもマーキオン・ローはなかなかの怪物だよ。このトリックスターがたったひとりで黄金期ジェダイを手玉に取ってるかと思うとなかなか痛快だ。それにジェダイはまだマーキオン・ローの存在を知らないんだよなー。これはこの先どうなることか。

マーキオン・ローの周囲には適度に謎が散りばめられているとあり、自分も久しぶりにファンセオリーに目を通してしまった。なるほどなーってな感じのことがたくさん書かれてあった。多分スノーク以来かな、こういうのって。こうやって予想してるときがある意味一番楽しいかもしれない。

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