『The Secret History of Star Wars』(2008年)の紹介

スター・ウォーズの歴史を語るとき、まことしやかにささやかれる逸話がある。

「ジョゼフ・キャンベルの作品を参考にして、数千年に渡る神話の歴史をストーリーに盛り込んだ」

「ルーカスは壮大で巨大な物語を構築し、それを三つに分けた」

「最初に6章分の物語を考え、全てのキャラクターの背景を作り上げたが、技術的な制約やストーリーテリングの観点から、まずエピソード4に着手した」

これはどこでも目にする、よく世に知られた話だ。ルーカス本人も次のように話していた。

最初にスター・ウォーズを作ったとき、大きなピースが出来上がった。とても大きな脚本で、ひとつの映画に収めるにはとてもじゃないが大きすぎた。だから初めにその3分の1、つまり基本的にファーストActにあたるのだけど、それがオリジナルのスター・ウォーズになった。スター・ウォーズが成功したことで『やった、これで全部の脚本を終わらせられるぞ』と他の二つのパートをすることができたんだ。

スター・ウォーズ製作初期に『The Adventures of Luke Skywalker』と名付けられた通り、オリジナルトリロジーのテーマはルーク・スカイウォーカーの冒険だった。だが、プリクエルトリロジーがスタートし、やがてシリーズの焦点はルーク・スカイウォーカーからダース・ベイダーへと移る。時を同じくして、スター・ウォーズ誕生にまつわるルーカスの説明もシフトチェンジする。

これはダース・ベイダーの悲劇としてデザインされていたんだよ。モンスターがドアから出てきて、みんなを投げ飛ばす。やがて映画の真ん中で、実はヴィランが人間でヒーローは彼の息子であることが明かされる。そして息子に導かれ、このヴィランがヒーローへと変わる。ひとつの映画のはずだったのだけど、そんなことしたら5時間くらいの長さになるし、あのときはそんなお金もなかったから、それを分けたんだ。

はたしてこの話はどこまで本当なのだろうか?

最初に種明かしをするが、実はルーカスはかなり誇張した説明をしている。そして、スター・ウォーズの製作にまつわる実際の経緯は、世に知られている話よりずっと面白いのである。『The Secret History of Star Wars』(2008年)は歴史に埋もれた過去の資料とインタビューを掘り起こし、脚本ストーリーが発展した経緯を詳細に明かしている。

元々、皇帝はリチャード・ニクソンをモデルとした単なる歪んだ政治家にすぎず、今のような邪悪な闇の使い手ではなかった。ヨーダも存在せず、ベイダーがルークの父親でもなければ、ルークとレイアに血のつながりもなかった。

ルーカスは、プリクエルがオリジナルトリロジーの解釈を変えると話していたが、実はそれは当時も同じだった。続編のたびに初代スター・ウォーズもそれに応じて変化していったのだ。

当サイトでは本書の中から特に印象的だった箇所を紹介したい。特にルーカス伝記が面白い内容だったため、途中からはそちらをメインに書くつもりだ。一方、筆者マイケル・カミンスキーはくどいくらいに「いかにベイダーの話が途中ででっちあげられたか」を繰り返しているのだが、個人的にはこの話にそれほど興味がないため、あまり取り扱う予定はない。とはいうものの、スター・ウォーズ草案・脚本が発展した経緯と意図を知れば、おのずと真実の姿も見えてくるだろうと思われる。

この話を読む前にひとつアドバイスをすると、すでに知っているスター・ウォーズの知識はいったん脇に置いてほしい。特に『帝国の逆襲』と『ジェダイの帰還』はそう。ルークとベイダーが親子で、ルークとレイアが兄妹というのは忘れて、フラットな気持ちで話の変遷を眺めてほしい。スター・ウォーズも古今東西を問わず、あらゆる作品のライティングプロセスとさほど変わらないことが分かるはずだ。

本をイチから紹介するとなると大変なため、まずは自分が面白いと思った箇所から入っていくつもりだ。時系列がたまに飛んだりして混乱するかもしれないが、「情報保管庫」のページではタイムラインごとに並べてあるため、それを見れば話の前後は分かるようになっている。

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6 thoughts to “『The Secret History of Star Wars』(2008年)の紹介”

  1. “いかにベイダーの話がでっちあげられたのか”
    映画製作においての工程ですからね。
    私もあまり興味がありません。しかし、
    1976年当時、小学2年だった私にep4を映画館に連れて行ってくれた父親が、後日新聞を読みながら、
    “ヘェ〜、この前見たのは4でその後5.6をやって、
    その後はダースベイダーの生い立ちをやるんだって”
    と言われた記憶が残っています。当時は何故、悪のベイダーの生い立ちをやるのかさっぱりわかりませんでした笑

    1. h2d2さんはブログとかやってないんですか?そういう話もっと聞いてみたいなー。

      日本公開って78年ですよね?当時は全部で12作品シリーズと公言してたみたいなんですよ(笑)プロデューサーのゲイリー・カーツは「オビ=ワンの若い頃をやる」と説明してたから、そっちの話が新聞にも載ってたんですかね。

      80年にはルーカスもトーンダウンして「9作品に減らした」「次のトリロジーはベン・ケノービとダース・ベイダーの若い時代」と発言してるから、そういうのはすでに頭にあったみたいです。

      1. 失礼しました78年です笑
        ブログはやってません。
        いつの頃だか、レイアはルークの妹の設定ではなくep7〜9でルークがその妹を探す物語と聞いたこともありましたね。

      2. そっかー残念。

        あーそうそう、そっち系の話も本に出てきますよ。ヨーダが「もう一人おる」と言ってたけど、帝国の逆襲の時点ではあれがシークエルトリロジーのアイデアだったらしいです。最後の希望の若いフォースの使い手と、それを鍛えるルーク…みたいな。まあルーカスもたいして決めてなかったみたいだけど。

  2. ジョージルーカスってドラマのLOSTを絶賛していましたが
    LOSTが何かの賞を取った時の祝辞で
    「SWが成功したのは、後付けの展開を初めから計画されていたのかのように見せかけられた、からだ」みたいなこと言ってましたねー

    1. あの話めっちゃ好き(笑)今本読んでるから「あ、これマジやったんやな」ってな感じでなおさら面白い。

      ちょうどその話もしたかったし、しばらくしたら記事にすると思います。

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