『スカイウォーカーの夜明け』小説の感想 ─ レイとカイロの協奏曲

ハイ・リパブリックが待ちきれず、代わりに読んだ『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』のノベライズ。

あまり期待してなかったのだけど、それが意外や意外!結構楽しめた。

『スカイウォーカーの夜明け』は今では映画としても大好きなのですが、ノベライズを読んで色々モヤモヤしていた箇所が解消されたことで、自分の中で好き度が一気に急上昇した。

映画と違って登場人物の内面描写も知ることができるし、これはまさしく小説を読む上での利点だろう。

今こうしてシークエルを振り返ってみると、やはりレイとカイロ・レンが織りなすダイナミクスが今回の三部作の魅力だったと感じる。ふたりが奏でる協奏曲。これがまさにシークエルのテーマだった。

というわけで、感想や印象に残った所はたくさんあるのだけど、この記事ではレイとカイロ・レンに焦点を当てて取り上げます。しかも長くなったので二回に分けます。今回はその前半戦。

パサーナの禁じられた砂漠

パサーナの砂漠はレイに故郷ジャクーを思い出させた。彼女にとっては見慣れた光景なのだが、そのせいか予期せず、あのときの心の傷が蘇る。

砂はジャクーよりも赤みがかっていたが、それ以外はほとんど同じだ。延々と続く容赦のない砂漠に、吹き付ける砂っぽく乾燥した風。レイは、あのような場所で装備もなしによく生き延びたものだと、今思い返すと不思議で仕方がない様子だ。

レイたちはルークの痕跡を探しにパサーナの禁じられた砂漠を訪れるが、その地は祭りの真っ最中だった。とても美しく、賑やかなフェスティバルだ。

楽しそうに遊ぶ子供たちの姿を目にするレイ。そのとき、人混みの中でひとりの少女が転倒して、それを彼女の両親が後ろからクイッと持ち上げる。それがレイの心を打つ。

「ああ、この子たちはなんの心配もしなくていいんだ」

あの子供たちはただ前だけを向いて歩いてさえいればよかった。何が起きても、それをなんとかしてくれる“誰か”が彼女たちにはいるのだ。レイは孤児だった自分の境遇が頭をよぎる。

レイはある女の子から名前を尋ねられ、ただ「レイ」とだけ答えた。これは映画のラストシーンにもつながる重要なやり取りだろう。この時点ではレイはみなしごレイ。単なる“レイ”だった。

ただ、それでもレイの心はいたって平穏だった。彼女には仲間と一緒にやるべき使命があるのだ。故郷を思わせるパサーナの砂漠も、幸せそうな子供たちも、何一つレイの心をかき乱すことはなかった。

カイロ・レンはそのレイの気持ちを巧みに刺激しようとする。

「まだ両親が去ってからの日々を数えているのか?」「どこかジャクーを思い出させる場所にいるな。両親を待っていた日のことや、独りぼっちだった頃の苦しみを思い出すだろ」

カイロはレイの心の傷と怒りを突いてくる。なんとかレイの脆弱性をあぶり出そうとするのだが、それでも彼女のガードは固く、心が揺らぐことはない。

映画冒頭のシーンでもあったように、レイの修行の課題は心の調和を維持することにあり、それこそレイアが教えようとしていたことだった。そのため、カイロとの会話でもレイは努めて平常心を装っていた。

実は、この話は輸送船をフォースで引っ張るシーンにつながってくるのだが、それはまた後で紹介したい。

カイロ・レンの視点

レイは努めて冷静だったのだが、それと対照的なのがカイロ・レンだ。TIEファイターで乗り付けたときのカイロの心は、いつもより少し荒ぶっていた。この対比は非常に面白い。

今作での自分のお気に入りのシーンは、パサーナでのフォースバトルとデススターのラストバトルなのだが、実は映画を観ただけではパサーナのときのカイロの狙いが今一つよく分からなかった。

正直「なぜTIEで轢こうとしたのか?」と疑問だった。レイを仲間にしたいはずなのに、そんなことしたら危ないじゃないか…と。

小説を読んで、このときのカイロの精神状態がよく分かった。これは収穫だった。

というわけで、少し詳しく見ていこう。小説の記述が一番分かりやすいと思うので、該当箇所を紹介したい。以下、TIEファイターのシーンからの抜粋。

カイロの中に奇妙な思いが湧き上がる。父ハン・ソロと最後に対面したときのこと。この手で殺めることをついに決心したときのこと。あの思いが再びこみ上げる。

ダークサイドの道を遂げるためには、自身の過去と光を完全に断ち切らねばならない。

今、ようやく理解できた。カイロにとってハンが過去なら、レイは光だ。

いまだ苦しみと怒りの渦に取りつかれたカイロ。父親に愛されていた日々の記憶を消し去ることができないままにいた。父の手が優しく頬に触れる感触、愛と理解に満ちたあの父の瞳…。

なぜこの苦しみが続くのか。それもこれも全て自分に宿る光のせいだ。

皇帝は正しかった。あの娘は死なねばならない。あるいは、自分が彼女の中にある光を消すまでだ。

レイは本当は恐怖を感じていた。カイロにはそのことが手に取るように分かった。だが、それでも彼女は一歩も引くことはない。仁王立ちするレイの姿は、戦いの準備が整っていることを意味していた。それがカイロの怒りを刺激する。

「恐怖のあまり固まればいい。そこに縮こまっていればいいんだ。あいつにそのチャンスを与えたとき、ダークサイドに加わるべきだった。なぜそれに逆らうんだ?いったいなぜだ?」

怒りが彼の視界を赤く染める。もはや皇帝のことなどどうでもよかった。スター・デストロイヤーのことだってどうでもいい。ただ、この苦しみをここで終わりにしたかった。

この次にいったい何が起きるか。もし生き延びたければ、彼女はこれまで以上の力を発揮しなければならない。

レイ。本当の自分が何なのか、俺に示してみろ。

カイロは、レイがライトセーバーをつかみ、それを起動するのを確認した。スロットルを加速させる。

TIEファイターの決闘シーンでは、カイロはこのような心境にあった。

ここではカイロ・レンの心が揺れ動くさまがよく見て取れる。自分の苦しみを断つためのカギとなるのがレイの存在だった。しかし、彼女の反発する様を目の当たりにしたことで、カイロの心の針が衝動性へと一気に振れる。

カイロが抱くむき出しの暴力性に対して、レイは正面から受けて立った。それがあの宙返りのシーンだった。

©Lucasfilm Ltd.

カイロとレイの間にあるダイナミクス。これがまさにシークエルの魅力であり、三部作を通して一貫して描かれてきたものだ。

パサーナでのファーストコンタクトの裏には、このような思いが交錯していたことを知ると、これまでとは少し違った見方ができるかもしれない。

レイの視点

一方、レイちゃんから見た視点がこれだ。

レイはTIEが近づいてくるのを目にし、彼の心を感じ取った。カイロの苦しみ、そしてあまりの殺意に思わず息をのむ。

だが、彼女はなにをすべきかは分かっていた。ヒーリングは力を消耗させたが、同時に新たなフォースの流れを開いてくれた ─ 与えることと奪うこと。これまで理解できなかった、より完全に近い調和だ。彼女はレイアとこの話がしたくてたまらなかった。

カイロと再び対面し、勝負のときが目前に迫っていた。レイはフォースに身をゆだね、戦いの準備をする。本当のところ、実はレイも恐怖を感じていたが、なぜか不思議と心の内は冷静だった。

かつてルークは「恐れはダークサイドにつながる」と教えてくれたが、恐れと静寂は共存できるのだと、レイは実体験を通して学んでいた。もしかすると、レイアがいつも自分に教えようとしていたのはこのことなのかもしれない。そのような思いがレイの頭をよぎる。

…と、これがあのTIEファイターのシーンの舞台裏だ。

面白いことに、機体が木っ端みじんになったのを見たとき、レイの気持ちは「彼がこのまま死んでほしい」「いや死んでほしくない」と相反する気持ちが入り混じり、レイも自分の本心がどこにあるのか分からない有様だった。

そして一方のカイロ・レンも、機体から抜け出して最初に思ったのが「彼女をあのまま殺さなくてよかった」と内心ホッとしていた。

ついさっきまで殺そうとしていたくせに、まず頭に浮かんだのが「あー、殺さなくてよかったー」というのが実に面白い。

このふたり、戦っているようで本当は全く戦っていない!これがレイとカイロ・レンの間で繰り広げられるダイナミクスの魅力であり、ふたりのバトルの真骨頂だろう。敵味方の垣根を超えた、屈折したライバル関係だ。それが実に面白く、自分が大好きなポイントでもある。

フォースバトル

続いてレイとカイロ・レンによるフォースバトルのシーン。個人的に大好きなシーンなので、ここにも触れたい。

これまで紹介したように、カイロとは対照的にレイの心はいたって冷静だった。殺意にまみれたカイロを相手にしても、レイは調和を意識していた。

だが、その心が一気にかき乱される場面が訪れる。それがフォースバトルのシーンだ。

フィンが「チューイがあの中にいる」と叫び、その先では今まさに船が飛び立とうとしていた。ここでレイの中で過去の記憶が交錯する。

ダメ、ダメ、ダメ。

かつて彼女はこれを経験したことがあった。砂埃が吹き付ける中、ただ無力に立ち尽くし、自分が愛する者を乗せた船が飛び去るのを眺めていたのだ。

冷静だったレイの心が一気に恐怖に包まれる。熱く、純粋なる力が精神に流れ込む。彼女はフォースに意識を向ける。船をつかむかのように、そして、それを大地に向かってねじり取るかのように。

船の動きが遅くなり、空中でグラつき出す。エンジンが悲鳴を上げる。

レイは歯を食いしばる。額から汗が滲み始める。チューイを絶対に離しはしない。

あのときレイの脳裏をよぎっていたのが、両親が自分を置き去りにしていったときの光景だった。過去の記憶が蘇り、これまで冷静だった心は一気に恐怖に包まれる。そして、これがきっかけとなりレイの中でダークパワーが顔をみせてしまう…という場面だ。

©Lucasfilm Ltd.

実はノベライズを読んだことで、J.J.エイブラムス監督がジャクーとよく似た砂漠の地を再び選んだ意図がなんとなく分かった気がした。パサーナのロケーションにわざわざ砂漠を選定したのは、おそらくレイの過去とシンクロさせるのが狙いだったのだろう。

印象的だったのがこの直後のカイロ・レンの心理だ。もはや殺意はなりを潜め、これ以降はただレイをダークサイドに転向させるためだけに邁進していくのだった。

カイロ・レンは遠くから、船が空へと消えていくのを見つめていた。レイが乗った船だった。またしても彼女に打ち負かされた。だが、このとき彼は勝利感に満ち溢れていた。

あの娘を試した価値はあった。

彼女は信じられないほど驚くべきパワーを実演してみせた。ダークパワー。シスのパワーだ。

あのスカベンジャーが落ちるまでもう一押しだ。そしてそのときが来たとき、ふたりの中にある光が死に、ようやく闇を受け入れるのだ。さすれば、スター・デストロイヤーの艦隊も、シスの王座も、彼らのものとなる。

「あのスカベンジャーが落ちるまでもう一押しだ」

これがまさにカイロ・レンの行動原理の核だ。実はカイロが押せば押すほどレイは反発していたのだが、そんな彼女の気持ちとは裏腹に、若き最高指導者は勝手に確信しており、頭の中では「レイは完落ち寸前だ」と半ば独り相撲に近い状態だった。

最初にこれを読んだときはさほど印象に残らなかったのだが、デススターにてカイロの内面描写を知って、自分の中で少し捉え方が変わった。

これはカイロ・レンの置かれている状況と精神状態、ひいては「そもそもなぜベンはダークサイドに堕ちたのか」という問いにもつながってくるため、また別の記事で取り上げたいと思う。

最後に

実は1週間前にすでに小説を読み終えて記事も書いていたのだけど、途中で面倒になり、今まで放置していたという有様です。最近どうもやる気が起きなくてね。ほとんどゼロに近い状態。これはダメなサイクルに入ってる。

でも、あまり時間が空くと内容とか感動も忘れてしまうし、スターウォーズの日に合わせて重い腰を上げて書くことにしました。

他にもノベライズで印象に残った箇所はあって

  • レイとカイロ・レンの続き
  • レイアのこと
  • パルパティーンのこと
  • その他

と、感想記事は多分あと4回くらいかな…?途中で挫折したら申し訳ない。先に謝っておきます。

まあ、焦らずボチボチ更新していくことにします。じゃあ、そんな感じで!

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10 thoughts to “『スカイウォーカーの夜明け』小説の感想 ─ レイとカイロの協奏曲”

    1. ありがとうございます。こういう嬉しいコメントが来るのもフォースのご加護に違いない。スターウォーズの日バンザイ!

  1. はじめまして、こんにちは。
    興味深く読ませて頂きました。面白い!
    パサーナでの最初の対決とフォースバトルは私も大好きです。
    最後のジェダイが好きなのですが、スカイウォーカーの夜明けもかなり好きになってきました。
    次も楽しみにしてます。ゆっくりでもいいので、4回読みたいですwそれでは、フォースと共にあらんことを

    1. マーティンさん、ありがとうございます。

      フォースバトルかっこよかったですね。昔ゲームで見たときから「いつか実写でもやるんだろうなー」とは思っていたので、それがついに見れて少し感慨深かったです。

      フォースと共にあらんことを。

  2. 同じく、挫折せずに続きをw
    しかし、映画ではその内面葛藤を全然感じなかったなぁ…。
    小説読んでみようかな。。。

    1. カイロ・レンがポーカーフェイスなせいであまり感情が読めなかったのだけど、小説を読んだ後だと逆にそれが良かったように思いました。

      内面描写を知ってから映画をみると、点と点がつながったような感じがしたんですよ。「あー、あれはそういう演出だったのかー」みたいな。

  3. いつも楽しくサイトを見させていただいています。
    上映時間のなかでは厳しいですよね。
    色々言われているスカイウォーカーの夜明けですが、
    その不格好だけど、スターウォーズ愛だけは目一杯詰めてある感じが寧ろ大好きです。
    エンド・ゲームのように完璧なものよりも、逆に愛おしいです。

    1. ホントおっしゃるとおりで、欠点を補って余りあるほど良いところがたくさんあったと思います。だからマイナスポイントはもう気にならなくなった。最初見たときはペース早いなーとは感じたけど、二回目以降は違和感もなくなったし。

  4. ノベライズ、私も今ちょうど半分あたりまで来たところ。英語版なのでなかなか進まないですが・・・。
    映画版を補間する意味合いではよく出来てると思いますね。この心理描写を読み解ける何らかの演出及び演技があれば劇場版の印象はもっと変わったんじゃないかな。或いはカットされてしまったのでしょうかね。
    よし、管理人さんが感想書き終わるまでに読み終えねば。。。!

    1. 小説読んで「やっぱり作家の人は凄いなー」と感動しました。

      映画で心理描写って難しいですよね。あまり説明的になっても嘘っぽくなるし。

      小説だけど俺は面白そうじゃない箇所は結構バンバン飛ばすんですよ(笑)DAMASKさんは自分のペースで楽しみながら読んでください。

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