ルーカスの続三部作案を購入、却下されたときのエピソードなど – ボブ・アイガー会長が明かす

ディズニーのボブ・アイガー会長が回顧本『The Ride of a Lifetime: LESSONS LEARNED FROM 15 YEARS AS CEO OF THE WALT DISNEY COMPANY』を出版し、『フォースの覚醒』製作初期のジョージ・ルーカスのエピソードも率直に語っています。

本の中では、ルーカスが自ら書いたアイデアが却下され、失望していたときの話も登場するのですが、これがなかなか話題になっています。

ただまあ、ファンの人は知っている人も多いかもしれないけど、実は現在のEP7~EP8の流れはルーカスのプランとそれほど違いがあるわけではないんですよね。

  • 過去の出来事が原因でルークは姿をくらましている
  • スカベンジャーの少女がルークを探す旅に出る
  • 少女との出会いを通して、ルークは自分のあり方を取り戻す
  • ハンとレイアの息子がダークサイドに堕ちる

…とこんな感じで、大枠はだいたい同じかな?ってな具合です。

ボブ・アイガー会長も「(ジョージが提出した)ストーリーの一部を使わなかった」と明かしているけど、逆にいうとそれ以外の大部分は採用した、と考えるのが自然なのかもしれない。

以下、ボブ・アイガー会長の回顧本から注目箇所をピックアップしていきます。

ルーカスの三部作構想について

話し合いのある段階で、ジョージは新しい三部作映画の完全なアウトラインがあることを教えてくれて、そのコピーを3部、我々に送ってくれることにも同意した。ひとつは私。ひとつはアラン・ブレイバーマン。そして当時、(ディズニー)スタジオを率いることになったばかりのアラン・ホルンにもひとつ送られた。

アラン・ホルンと私はジョージのアウトラインを読み、それを買い取ることを決めた。しかし、購入時の同意内容の中でも明らかにしていたことだが、彼の用意したプロットラインに忠実に従う契約上の義務はなかった。

このときプロットラインを買い取った際に、どうやらルーカスとボブ・アイガー会長との間で受けとめ方に違いがあったようです。この話は後ほど登場します。

クリエイティブな面での権限

クリエイティブな面での権限について、私が決して譲ることはないことをジョージも分かっていたが、彼にとってはそれを受け入れることは難しかった。そのため、私たちのリクエストに応じてアドバイスをすることに同意してくれたものの、彼は乗り気ではなかった。

我々は彼のアイデアに対しては常にオープンだと私は約束したが(これはなにも難しい約束ではない。ジョージ・ルーカスのアイデアにオープンなのは当たり前だ)、しかしアウトラインと同様に、私たちには義務はなかった。

ルーカスの案に従わないと告げたとき

初期の頃、キャシーがJ.J.とマイケル・アーントを連れてジョージと会い、自分たちの映画のアイデアについて話しをすることがあった。そこで彼らがプロットの説明を始めたところ、ジョージはすぐに動揺してしまった。交渉のときに彼が提出していたストーリーの一部が使われていないことが分かり始めたのだ。

「交渉のときに彼が提出していたストーリーの一部が使われていないことが分かり始めた」
(it dawned on him that we weren’t using one of the stories he submitted during the negotiations.)

これは意外と重要な箇所かもしれない。

以前の記事でも取り上げたのですが、実は現在のシークエルの流れはルーカスのプランとそれほど大きな違いはないことが判明しています。

ジョージ・ルーカスによる続三部作のオリジナルプラン、一部が明らかに
続三部作の草案内容、パブロ・ヒダルゴが一部明かす

KK社長やストーリーグループのパブロ・ヒダルゴが繰り返し説明しているように、EP7~EP8のストーリーのベースはルーカスによる初期のアウトラインが下地となっているようです。

上記のボブ・アイガー会長の言葉もそれを裏付けます。

©Lucasfilm

それではなぜルーカスは不愉快になり、裏切られたと感じてしまったのか。ボブ・アイガー会長は次のように回想しています。

キャシーとJ.J.と私はサーガの進むべき道について話し合い、それがジョージの描いたアウトラインではないことを我々みんなが同意した。

契約上、私たちは何にも縛られないことはジョージも知っていたが、彼の思いとしては、ストーリー案を購入するということは我々もそれに従うものという暗黙の了解があると考えたようだ。だから、自分のストーリーが捨てられたことで、彼は失望してしまった。

私は最初の話し合いのときから、彼にいかなる誤解も与えないようにとても注意を払っていた。今でもそうさせたとは思っていない。だが、もっと上手くやれたかもしれない。J.J.とマイケルと一緒にミーティングの準備をするべきだったし、話し合いの内容も事前に彼に教えるべきだったかもしれない。私たちはこちらの方向に進んだほうがいいと思っているんだ、とね。

彼がよく納得するまで話しができたはずだし、彼を驚かせて怒らせるなんてことはもしかすると避けられたかもしれない。

しかし現実には、スター・ウォーズの未来について話し合う最初のミーティングで、ジョージは裏切られたと感じてしまう。これらの一連のプロセスは彼にとっても決して簡単なものではなかったが、私たちは不必要な波乱のスタートを迎えてしまった。

「ストーリー案を購入するということは我々もそれに従うものという暗黙の了解があると考えた」

ボブ・アイガー会長によると、ルーカスが失望した理由はこの点にあるとのこと。

つまり、ルーカスの解釈としては

「ストーリー案を購入 = プロットラインがそのまま映画で使用される」

と考えていた模様。

てっきり自分の案がそのまま使用されるものと思い込み、ミーティングの場に意気揚々と乗り込んだものの、JJたちがEP7のプロットを説明し始め、段々雲行きが怪しくなってきた…というのが真相のようです。

フォースの覚醒を観て

グローバルリリースに先立ち、キャシーはフォースの覚醒をジョージにみせた。彼は失望を隠そうともしなかったよ。「新しいものが何もないな」と彼はそう言った。

オリジナルトリロジーの各映画では、新しい世界、新しいストーリー、新しいキャラクター、新しいテクノロジーを提示することが彼にとっては重要だったんだ。

それが今回は彼にいわせると「ビジュアル面やテクニカル面での十分な前進がない」とこうだった。

彼は間違っていない。しかし同時に、我々が受けているプレッシャーを理解してもいなかった。熱心なファンに、これこそまさにスター・ウォーズの真髄だと感じさせるような映画をみせるというプレッシャーをね。

私たちは意図的に、ビジュアル的にも色調的にも過去の映画とつながっている世界を作り上げ、みんなが愛し、期待していたものから大きく外れることはしないようにした。だけどジョージは、我々がしようとしていたまさにそのことを批判していた。

ここ数年間の間に作られたスター・ウォーズの映画を振り返ると、J.J.はほとんど不可能に思えたことを成し遂げ、これまでとこれから先をつなぐ完璧な橋をつくってくれたと私は信じている。

たしかにボブ・アイガー会長の言い分はよく分かる。

プリクエル三部作があれだけ批判の対象になり、ラジー賞を取るほど評価が低かったことを踏まえると、それを経て新たなトリロジーを作るときに、新しさを追求してファンの気持ちを逆なでするような博打はしたくないし、馴染みのある旧三部作の世界観に回帰しようとしたのは必然だったかもしれない。

少なくともルークやレイアなど、オリジナルキャラクターもついに帰ってくることを考えると、なるべく旧作の世界観を壊したくないという思いや意図はよく理解できる。

ただ、ルーカスが不満を感じるのももっともかもしれない。

EP7に対する批判のひとつが「単なるEP4のコピー」という手厳しいものだったけど、ルーカスの「新しいものが何もない」という言葉はまさにそれを代弁している。

はたしてルーカス案のエピソード7はいったいどのような流れだったのか。気になる…。いつか公開される日が来るのだろうか。

フォースの覚醒のプレミア

映画に不満はあったものの、私はジョージがフォースの覚醒のプレミアの場にいることが重要だと思った。最初、彼は来たがらなかったが、それでもキャシーが今ではジョージの妻となったメロディ・バブソンの助けも借りて、これをするのが正しいことなんだとなんとか説得した。

取り引きの最終段階のときに交渉していたものの中に、決して誹謗中傷はしない(non-disparagement)という条項があった。私はジョージに、これから制作されるいかなるスターウォーズの映画に対しても、公の場では決して批判しないことに同意するよう頼んだ。

私がこれを持っていったとき、彼は「自分はこれからウォルトディズニー社の大株主になるんだ。君らのすることを非難するわけないだろ。ただ私を信じてくれ」とそう話した。私は彼のその言葉を信じることにした。

どうやらルーカスは結局、この条項にはサインしなかったようです。そしてその後、あの有名な「奴隷に売り渡した」発言が飛び出します。

逆に言い換えると、ルーカスは契約上は縛られることなく自由に発言できる立場にあるにもかかわらず、あれ以降は特に非難めいた発言はしていないことが分かる。

映画が公開される度にプレミアに顔を出し、スターウォーズ・セレブレーションにも参加、ギャラクシーズ・エッジのオープニングにも出席etc、こう考えるとかなり協力的といえる。

©Lucasfilm

しかも、現在もルーカスフィルムに役職があり、たまに会社に顔を出し、社員の指導にあたっていたり、ジェダイに関してはいまだにルーカスが判断しているとのことだし、完全に引退したというわけではなさそう。

これは大事なことなのだけど、本の中でのボブ・アイガー会長の回想はあくまで『フォースの覚醒』のときのエピソードです。あれから時間も経ち、ルーカスの心境に変化があったとしてもおかしくないわけだし、今ではかなり雪解けが進んでいるのではないだろうか。

Source: Forbes, reddit

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